「お産ができる病院」が全国的に減少しています。
富山県内でも、この春から高岡市民病院で産科が休止となりました。
一部の病院へ医療機能を集中させる「集約化」の流れが加速している産科医療。
現状と今後を取材しました。

入善町の「あわの産婦人科医院」。
町内で唯一、出産ができる施設です。
40年以上にわたり、地域のお母さんと赤ちゃんを見守ってきました。

*入善町在住
「4人目です。今までも先生や皆さんにもお世話になっていて。近いというのがやっぱり安心」

*あわの産婦人科医院 八十島邦明さん
「もともとお産が好き。生命の誕生に立ち会うっていうか。(例えば)不妊症で治療している人が妊娠できて、そのお産に立ち会うというのは産婦人科冥利に尽きるというか、そういうのが結構いいんですよ」

院長の八十島邦明さん、67歳です。
以前は黒部市民病院に勤めていましたが、一昨年、前の院長の退任に伴い、存続が危ぶまれていたあわの医院の運営を引き継ぎました。
医院の医師は八十島さんひとりだけ、24時間365日お産に対応しています。

*あわの産婦人科医院 八十島邦明さん
「外来の診療中にお産があったりすると、中断してお産に行くしかない。20数年前は新川地区だけで9つくらい、魚津に5つくらい分べん施設があった。だけど知らぬ間に黒部と(入善と)2つだけになってしまった」

いま、「お産ができる」、分娩を扱う医療機関が減っています。
分娩を扱っている病院と診療所の数を県内を4つの医療圏にわけた地図で表します。
分娩可能な施設は、現在17カ所です。
1996年には42カ所あったので、この30年ほどで半分以下に減ったことになります。

最近では、一昨年「かみいち総合病院」が分娩業務を休止して富山医療圏は現在は7カ所となっています。

*新川医療圏(魚津・黒部・入善・朝日)は、救急搬送なども受け付ける黒部市民病院と入善町のあわの医院の2カ所です。

そして高岡医療圏でも、この春1カ所減りました。
高岡市民病院が、今年4月から分娩の取り扱いを休止し、婦人科のみの体制となりました。
富山大学からの医師の派遣が停止されたことが要因です。

これは、医療圏ごとに基幹病院に医師を重点的に配置をする「集約化」のしわ寄せとされていますが、実はこの産科医療の「集約化」が今後も進むと見られています。

その背景にあるのは、まずは少子化です。
県内で去年生まれた子どもの数は5859人と過去最少。
今後もさらに減少し、産科医療のニーズがさらに低下すると予想されています。

そして最近、声高に言われている「医師不足」も集約化の大きな要因とされています。
激しい勤務となる産科医は、長年、なり手が少なく現在、高齢化も進んでいるといわれてます。

*産婦人科医 種部恭子さん
「プライベートなんて全くない。病院から20分以上離れたことない、という生活。全員、当然過労死ラインを超えている。今いる産婦人科医も私たちの世代は多かったが、もうみんなこのあと定年になる。そうするとお産もやっていけなくなる。時間の問題」

産婦人科医の種部恭子さん。
県医師会理事で県議でもある種部さんは、産科医の厳しい現状を訴えています。

一方、近年は高齢出産が増え、リスクの高いお産が増えています。
さらに麻酔をかけながらお産をする「無痛分娩」の希望者も増加していて、病院は麻酔科医や帝王切開ができるスタッフなどを備えた体制が求められています。

医療の質の向上にもつなげようと、今年度からは医師の働き方改革がスタートし、勤務医の時間外労働は初めて上限が設けられました。
「医師不足」のなかで「高度医療」が求められる今、種部医師は「産科」の集約化は必要だと話します。

*産婦人科医 種部恭子さん
Q「集約化」はいろんな意見がありますけど、もう避けて通れない?
「『集約化』は避けて通れませんし、その方が"安全”。『安心安全』とよく言われるが、“安心”と“安全”は全く別物。“安全”が一番だと思う。一瞬の医療の質の違いによって助けられるものが助けられないってことは、最も避けなきゃいけない」

ただその上で種部さんは、集約化により分娩施設が遠くなる妊婦の不安を軽減し「安心」を担保するための方策も必要だと行政に働きかけています。
それが「産前ケア」の整備です。
北海道などすでに整備されている地域もあるといいます。

*産婦人科医 種部恭子さん
「そろそろ出産という状況になったときに、分べん施設のすぐ近くに宿泊していただく。家族がみんなで近くに待機してそういうところで生活をしていただいて、出産を迎えるという形で距離的なことを解決するというのは、もうすでに(北海道などで)やっている。先に産前ケアを整えて、それを十分に皆さんが当たり前のように使うとなってから集約化。でもそれが浸透したり、その予算が付いたりするまでまだ時間がかかる。それまでの間(医師は)みんな持ちこたえてほしいと思っている」

出産をめぐる環境を整える上で、優先すべきことは何か…。
入善町、あわの産婦人科医院の八十島さん。
医師の働き方改革は勤務医に限られ、個人医院の院長である八十島さんは対象外です。
「集約化」に理解を示しながらも、体力の続く限りお産ができる医院を続けたいと話します。

*あわの産婦人科医院 八十島邦明さん
「『集約化』は仕方がない。でもお産は、新型コロナのときもそうだったが、新川地区で黒部市民病院がクラスター発生してお産をとれなくなったらどこへ行くのか。危機管理的にも、お産ができる病院は極端に減らしたらだめだとは思う。そういう病院の灯を消したらだめだとは思っている」

医師不足のなか、リスクの高い出産に適応するためにも「集約化」は進められそうです。
ただ、八十島さんがいうように、不測の事態があっても安心して子どもを生める体制をどのように構築するのか…さまざまな視点から考えていく必要があります。

引用元:
少子化・医師不足・高度医療…避けられない『産科の集約化』求められる産前ケア整備と不測の事態への備え(Yahoo!ニュース)