−−50代女性です。令和元年9月に卵巣がんの根治手術として、子宮、両側の卵巣・卵管、大網(胃と横行結腸に付着し下腹部に垂れ下がる膜状の組織)を切除し、骨盤リンパ節と傍大動脈リンパ節をともに郭清(かくせい=目に見えるがんは全て切除)しました。卵巣の明細胞がんで、進行期はTC期(手術時に癒着部位が破綻)と診断されました。退院後、下腹部の激痛と40度を超える発熱に見舞われ3週間入院。再発予防のための化学療法(抗がん剤のパクリタキセルとカルボプラチンを併用するTC療法)は延期し、2カ月遅れで行いました。なぜ私は高い熱や激痛が出たりしたのでしょうか。
「骨盤・傍大動脈リンパ節の郭清に基づくリンパ液の漏れが原因です。液の量の多寡は状態によってさまざまですが、大部分の患者に起こります。これが骨盤底部にたまると、膨らんだ袋状のリンパ囊胞(のうほう)となりますが、長径5センチ以上の大きさになるのは10%未満で、大部分は小さくて無症状です。今回の場合、長径5センチのリンパ囊胞に感染が起きて増大し、リンパ膿瘍(のうよう=膿の塊)となり、さらに細菌が血液中に侵入して敗血症になったと考えられます。囊胞から敗血症に至るケースは数%でまれです」
「敗血症になると、高熱が出て激痛を生じたり、腸閉塞(ちょうへいそく)になったりするほか、悪化してショック状態になると死亡する危険性もあります。そのため、主治医は膿瘍に太い針を穿刺(せんし)して排膿(膿汁を吸引除去)したり、ガンマグロブリンなどの血液製剤を投与したりして敗血症の治療・再発予防に努めたはずです」
−−再発予防のために6サイクルのTC療法を受けたのに、3年が経過した4年9月に再発しました。まれなことでしょうか。
「がんが卵巣に限局しているTA期であれば、根治手術後の再発率は5%未満です。しかし、がん細胞が卵巣の被膜に侵入していたり、子宮や直腸に激しく癒着していたりして、摘出時に卵巣がんの被膜が破綻したTC期では20%程度が再発します。あなたの場合、これに当てはまり、術後に化学療法を行うのが一般的です」
−−再発確認後、主治医は再度、6サイクルのTC療法とともに、再発予防の効果を維持するためPARP阻害薬のオラパリブ療法を提案しています。受けたほうがいいでしょうか。
「PARPとはDNAの修復や、アポトーシス(細胞の自壊的な死滅)に関与する物質のことです。TC療法が有効であれば、オラパリブは卵巣がんの再発予防に大変期待できる治療薬です。平成30年から保険適用になり、主治医はその治療戦略を考えたのです。なお、TC療法が無効だと保険適用にはなりません」
−−オラパリブによる効果が低いとされたら、今後の治療はどうなりますか。手術は考えられますか。
「TC療法の有効性が低い場合は、オラパリブの効果も低いです。その場合には、オラパリブではなく、がん細胞のDNAに入り込んで成長を止めて死滅させるドキソルビシン(商品名ドキシル)と、がんの栄養血管形成を抑制するベバシズマブ(同アバスチン)を併用した治療を選択します。再発腫瘍が2個以下であれば、手術を行う可能性も検討されるでしょう」
引用元:
卵巣がん、3年以上経過で再発 分子標的薬を勧められています(産経新聞)