■閉院危機に新たな医師
入善町で唯一の産科医院「あわの産婦人科」(同町入膳)を、6月から黒部市民病院産婦人科部長の八十島邦昭さん(65)が引き継ぐ。現院長の退任に伴い閉院が危ぶまれたが、「分娩(ぶんべん)を担う医院を地域から絶やしてはならない」との思いで新たなスタートを切る。人口減少と向き合う地方の産科の在り方については「総合病院と医院の役割分担が大切」と指摘。地元の妊婦は「身近に相談できる病院があるのは心強い」と歓迎する。(高野由邦)
あわの産婦人科は1983年に開院した。2001年に院長が亡くなり、遺族が富山医薬大(現富山大)付属病院に医師派遣を要請。入善町出身で現院長の道又敏彦さん(58)が「故郷の地域医療に貢献したい」と手を挙げた。
分娩のほか、母乳育児のサポートや産後ケアなどを幅広く手掛け、近隣自治体や糸魚川市、長野県白馬村などからの来院に対応。一方、24時間体制で出産などに備える必要があり、年を追うごとに負担を感じるようになり5月末の退任を決めた。
「町内に分娩施設がなくなれば、通院中の人が困る」。そう思った先代院長の妻、粟野雅代さん(66)は、22年度末で黒部市民病院を定年退職する八十島さんに引き継ぎを依頼。閉院によって妊婦の負担が増し、まちの活気も失われることを懸念した八十島さんは、退職を前倒しして6月からの院長就任を決めた。
これまでにフルマラソンを約50回完走し、今年の富山マラソンにも参加を予定するなど体力面には自信がある。「命が誕生する瞬間に立ち会え、幸せを分けてもらう産科医の仕事は天職」と意気込む。
地元の妊婦は、医院の存続を歓迎する。生後1カ月検診に訪れた町内の女性(29)は「先生が代わるのは寂しいが、身近に相談できる病院があるのは心強い」とほっとした様子で語る。
退任する道又院長は「八十島さんは研修医時代の先輩で技術も高く、安心している」と言う。粟野さんも「開院から間もなく40年となる。これからも地域に根ざした医療機関として続けていきたい」と話す。
■県東部 相次ぐ産科休止 病院間の連携必要
県東部で、分娩を担う医療機関が減少している。新川医療圏では黒部市民病院とあわの産婦人科医院のみ。魚津市では2006年に産科医院がなくなり、滑川市の厚生連滑川病院は20年4月から分娩を休止している。上市町のかみいち総合病院も今年10月から休止するなど、出産を巡る環境は厳しさを増している。
背景には産科医不足がある。激務や訴訟リスクから敬遠される傾向があるからだ。24年度からの働き方改革への対応で、医師が少ない病院は産科の維持が難しくなり、基幹病院への人材の集約が見込まれる。
八十島さんは「総合病院を退職した医師や非常勤で働く医師が個人病院へ手伝いに出向くなど、病院間の連携や助け合いも必要になる」と話す。
引用元:
分娩医院 絶やさない 入善唯一の産科(北日本新聞)