恐らくあなたも、ワインのおかわりを頼んだり、たばこを吸ったりする妊娠中の女性に冷ややかな視線を投げかける人を見たことがあるだろう。だが、害を及ぼす恐れのある食品リストは長くなるばかりだ。この食品は体に良い、または悪いという研究は毎月のように発表されており、妊婦は情報過多に陥っている。
ここ数年の研究では、ごく一般的な食品や飲料が、妊婦が避けるべきものリストに追加された。これらは早産や母親の子癇前症(しかんぜんしょう)、子供の肥満、ぜんそくなどとの関連性が指摘されている。
◆コメにヒ素蓄積
ある研究は、母親がコメを食べると胎児がヒ素にさらされる可能性があり、子供の成長に影響が出る恐れがあると報告。また昨年7月に発表された別の報告では、チーズをかけたマカロニに高濃度のフタル酸が含まれると指摘された。フタル酸を大量摂取すると、男性ホルモンの一種であるテストステロンの生成が阻害される恐れがある。
これらの食品は現在、米国妊娠協会(APA)の「避けるべき食品」リストには載っていない。だが、同協会のブラッド・イムラー会長は、いずれにせよ避けるべきだと女性に助言する。「君子危うきに近寄らず」といったところだが、妊娠期の被害妄想と考える人もいるだろう。
常に科学誌で最新情報をチェックしていない限り、潜在的な危険因子を熟知するのはほぼ不可能だ。しかも、どの研究や記事が信頼できるかは専門家でなければ判断しようがない。
米デューク・ヘルスの栄養学者、エリザベス・ポリティ氏は「次々と出てくる研究についていくのは本当に難しい。非常に多くの報告がされているが、大半は観察研究。食品がリスク増加の原因なのか、何らかの関連があるだけなのかは判断できない。だが、女性にとって妊娠中は、安全策を取りたいと考える時期だ」と話す。
経済学者のエミリー・オスター氏は、そうした考えは不安を引き起こすだけでなく、食生活の不必要な変更につながる可能性があると警鐘を鳴らす。オスター氏は2013年に出版した著書「エクスペクティング・ベター(お医者さんは教えてくれない 妊娠・出産の常識ウソ・ホント)」の中で、無用に何かを避けることなく健康で安全に妊娠期を乗り切る方法を提案している。
例えば、ワインをほんの少し飲んだからといって胎児性アルコール症候群を心配する必要はない。ただ、洗っていない野菜や総菜コーナーで売られている七面鳥のリステリア菌には十分注意しなければならない。喫煙も駄目だ。「絶対に覚えておいてほしいのは、コーラを1日に5杯も飲んではいけないということ。妊娠中であろうとなかろうと」とオスター氏は話す。
◆炭酸飲料では賛否
APAのイムラー氏は、炭酸飲料は飲むこと自体を避けるべきだと断言する。オスター氏はそこまで心配していない。オスター氏によれば、炭酸飲料の影響を調べているように見える研究は、実際には食生活が健全かどうかを評価している可能性があるという。例えば、炭酸飲料を飲む女性はそもそも食生活を正すことにさほど関心を持っていない。
ハーバード・メディカル・スクールの教授で、炭酸飲料に関連したぜんそくと小児肥満の研究に携わるエミリー・オーケン氏は「結局のところ、妊婦が炭酸飲料の消費を減らしても不利益はない」と話す。
炭酸飲料メーカーを支援するロビー団体、米国飲料協会(ABA)は、炭酸飲料は健康に悪いとする科学界に異を唱える。同協会の広報担当、ローレン・ケーン氏は「欧州食品安全機関(EFSA)は、食品や飲料に含まれる低カロリーまたはノンカロリー甘味料は妊娠中に摂取しても安全だと認めている」と述べた。
いずれにせよ、妊婦が炭酸飲料を控えるのは難しくない。だが、一般に健康的な食品とされる穀物のコメにヒ素が含まれるとなれば話は別だ。
ヒ素に汚染された物質が胎児に有害であることを示唆する証拠は数多くあると、オスター氏は話す。近隣の工場や廃水から流れ出たヒ素を含む土壌で育てられると、コメにヒ素が蓄積するという。
APAのイムラー氏は「妊婦は何であれ、ヒ素を含む食品は避けるべきだ。一部の化学物質は大人には無害かもしれないが、胎児は大人よりもはるかに影響を受けやすい」と述べた。炭酸飲料についてそのような強い主張をする人はいない。
だが、コメに関して大騒ぎすべきではないとデューク・ヘルスのポリティ氏は考えている。実際、コメの消費量が多い日本や中国で出生異常などの問題が増えているわけではないからだ。
従って、過去半年の間に食べた体に悪そうなものについて心配し始めた臨月間近の人も、気楽に構えた方がよさそうだ。
「甘味料入り飲料をうっかり飲んでしまったからといって、慌てる必要はない。不安になるのも妊婦の体には毒だ」とオーケン氏は述べた。(ブルームバーグ Deena Shanker)
引用元:
妊婦悩ます食品の良しあし(SankeiBiz)