赤ちゃんと保護者が地域のグループホームを訪れてお年寄りと交流する滋賀県竜王町社会福祉協議会のプロジェクトが好評だ。敬老の日などに限らず毎月交流する取り組みは全国でも珍しいという。「生まれて初めてのボランティア」とも言える現場をのぞくと、世代を超えて自然体でつながり合う居心地の良い空間が広がっていた。

 木曜午前10時、母親4人と生後4カ月〜3歳の赤ちゃん5人が同町七里の「わかすぎの丘・七里」へ。リビングに集まった入所者9人にゆっくりと大きな声で自己紹介する。全員で童謡「うさぎとかめ」を歌い、緊張をほぐす。

 対面してから15分後、「触れ合いタイム」に入った。ソファに座る矢守アキエさん(89)の隣に、平田しのぶさん(38)=同町橋本=が生後4カ月の次女彩夏ちゃんを抱いて腰を下ろした。矢守さんは「かわいいね」と頬を緩めて彩夏ちゃんの頭をなで、終戦後の引き揚げ体験を語り始めた。

 「私は薩摩の出身。16歳で満州に渡った。のちに夫となる滋賀県多賀町の男の人が助けてくれてね。それで(日本に)帰ってこられた。今は聞く人もおらん」。つらい記憶を思い出したのだろう、彩夏ちゃんを抱き寄せた。

 この「プチどら★にこにこプロジェクト」は2015年10月に始まった。思いやりの心を育むとともに、若い子育て世代に地域に関心を持ってもらうのが目的だ。未就園児と保護者が対象で、現在は3人の父親を含む32世帯が登録。わかすぎの丘に加え、「希望の家・綾戸」(同町綾戸)にも月1回ずつ、4〜6組が訪れている。

 平田さんは初回のメンバーでもある。当時2歳の長女美織ちゃん(4)に「上の世代と触れ合ってほしい」と軽い気持ちで参加した。近所の人にも自分から声を掛けられるようになった娘の姿に成長を感じたという。平田さんは「子育てに行き詰まっても人生の先輩から『子は宝』と言葉をもらうと、子どもの大切さを確認できる。元気をもらえるのが魅力」と話す。

 リビングを見渡すと、自身が描きためたイラスト帳を自室から持ってきて紹介するお年寄りがいる一方、赤ちゃんに関心を示そうとしないお年寄りの姿も。

 1時間の交流が終わりに近づく。平田さんは矢守さんが差し出す右手を両手で握り返す。彩夏ちゃんはもう一度、頭をなでてもらう。3人の笑顔が印象的だ。

 見守っていた同社協の地域福祉コーディネーター宮川節子さん(58)は思う。「認知症の人もいる。世代も違う。だけど、そんなことを軽々と超えて世界が広がる。途中で亡くなる人もいて命のリレーを実感する。おうちに行かせてもらうという感覚と一期一会を大切に、無理なく交流を続けたい」



引用元:
赤ちゃんも「ボランティア」お年寄り笑顔に 滋賀で取り組み(京都新聞)