国が子宮頸がんワクチンの積極的な接種の呼び掛けをやめて3年8カ月。日本産科婦人科学会などが予防に効果があるとして呼び掛けの再開を求める一方、症状に苦しむと訴える女性たちが国と製薬会社に損害賠償を求める訴訟が東京地裁で今月始まった。ワクチンを巡る問題はどこへ向かうのか。混迷する事態の行方は。当事者たちの今を追う。

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 「どちらが正しい選択なんだろう。分からない」

 群馬県藤岡市の女性(45)は迷いが晴れない。子宮頸けいがんワクチンの定期接種を中学1年の娘に受けさせるかどうか、悩んでいる。

■「一時的な措置」
 国内では年間約1万人が子宮頸がんになり、約3000人が亡くなるとされる。子宮頸がんの予防に効果があるとして、任意接種だったワクチンを国が法律に基づく定期接種の対象にしたのは2013年4月。わずか2カ月後の6月、国は積極的な接種の呼び掛けをやめた。痛み、しびれ、目まい。接種した人から、複数の症状が相次いで報告されたことが原因だった。

 呼び掛けの中止は「あくまで一時的な措置。より安心して接種を受けてもらうため」(厚生労働省ホームページ)だったが、状況は今も変わっていない。

 こうした国の姿勢にワクチンを打つ女性は急減。県内で接種した人は、13年4月は1187人、5月は812人だったが、6月は331人、7月は34人に。16年度(11月まで)は月ごとに0〜3人程度となっている。

 「定期接種になった時は打たせようと思ったけど。普通の子が普通じゃなくなる可能性があると思うと…」。中学3年の娘がいる太田市の女性(42)は悩ましそうに語った。

 定期接種の対象期間は小学6年から高校1年まで。この5年間に、保護者や本人は接種するかしないかを決めなければならない。

 「万が一にも症状が出る可能性があるのなら、定期健診で早期にがんを見つけた方が良い」。高崎市の中学3年の女子生徒はこう思う。自分も母親(44)も、学校や医療機関でワクチンに関する正確な説明を受けたことはない。周囲にワクチンを打った人はいない。「将来がんになることを想像することができない」ことも、接種に前向きになれない理由となっている。

 母親は、娘ががんになることへの不安を口にする一方で、「ワクチンがどれほどがんを防ぐのに効果があっても、安全性に公的なお墨付きがなければ打たせたくないし、打たせられない」と話す。

■報告は34件
 国が接種費用の助成を始めた10年11月以降、県内では約5万人がワクチンを打った。県のまとめによると、関節痛や頭痛などの症状が出たとして医師から34件の報告があり、うち19件は重篤と判断された。

 「子宮頸がんは若い女性に多い病気と聞いて怖かったし、打たなきゃいけないんだと思っていた」。高校時代にワクチンを接種した伊勢崎市の女子大学生(21)は、当時をそう振り返る。「もう打った?」と友人と確認し合うほど、周りでもワクチンを接種する人が多かった。

 接種後は、注射した腕に筋肉痛に似た痛みが数日続いたくらい。生活に支障が出るような重い症状を訴える人がいることは知らなかった。「もし母親が知っていたら、心配して打たせなかったかもしれない」

 昨年12月26日。接種後の全身の痛みや運動障害といった症状について全国規模で調べた厚労省研究班は、未接種の人にも同様の症状を示す人がいたとする調査結果を報告した。ワクチンと症状の因果関係は判断しなかった。

 厚労省は「この結果をもって呼び掛けを再開することは考えていない」と説明、再開の是非の議論を専門部会で続けるとしている。

 【メモ】子宮頸がんは子宮の入り口部分(頸部けいぶ)にできるがんで、主に性交渉で感染するヒトパピローマウイルス(HPV)が原因。若い世代での発症が多く、20代から急増し、30〜40代でピークとなる。初期は自覚症状のないことがほとんどで、発見には検診が重要。ワクチンは特にがんになりやすい型のHPV感染を防ぐもので、日本では2009年にサーバリックス、11年にガーダシルが承認された。

引用元:
《混迷の行方 子宮頸がんワクチンは今》苦悩 正しい選択分からない (上毛新聞)