難しい漢字に難解な読みをあてた「キラキラネーム」。20年ほど前から子供に名付ける親が増え、幼稚園の先生たちを混乱させるようになった。その子供たちの多くは大学生となり、大学関係者を戸惑わせているという。こうした名前は今後、キャンパスで増えていくとみられる。(櫛田寿宏)
◇
◆音の響き優先
東京都内の私立大の教授は「ここ数年、キラキラネームの学生は確実に増えている。授業中に下の名前を呼ぶことは少ないが、学生課などではコンピューターに名前を入力する際などに混乱しているようだ」と話す。
キラキラネームは、平成になってから創刊されたマタニティー雑誌が個性的な名付けの特集を組んだことなどで広まったとされる。特徴は、漢字表記と異なる読み方にして、字の意味よりも音の響きを優先させる点だ。
例えば、「愛忠人(えちゅうど)」の場合、一般的に「愛」は「え」と読まないが、「愛媛」のように地名で「え」と読むことを“応用”している。「天使」という表記で「えんじぇる」と読ませるなど、まったくの当て字の場合もある。
「どのような名前にしても自由だとは思いますが、覚えにくく、誰のことを指しているのか分からなくなるんです」。こう教室の様子を明かすのは、都内にある別の私大の教授。ゼミの討論中に、学生同士が下の名前で呼び合うと、キラキラネームが飛び交い混乱することがあるという。「今の高校生は、学年によっては3割くらいが読みにくい名前という話もある」といい、今後さらにキラキラネームの学生が増えそうな状況に困惑気味だった。
◆親はどんな人?
命名研究家の牧野恭仁雄(くにお)さん(72)は、四半世紀にわたり各地で子供の名付け相談を受けてきた。「キラキラネームはここ20年ほどで大きな流れになった。テレビなどのメディアで広がったことが大きい」と指摘する。
実際、わが子にキラキラネームを付けたいと相談に来るのはどのような人なのだろうか。
「外見は普通だし、言葉遣いもていねいな人が多い」と牧野さん。「特徴的なのは『個性』という言葉が好きな傾向があること。『平凡な名前にはしたくない』と考えているようです」
実はキラキラネームは新たな潮流ではない。大正から昭和初期にかけても流行している。「以利亜(えりあ)」「撤母耳(さむえる)」など珍しい名付けがあったという。
牧野さんは「奇抜な名前は、大正期や現代のような平穏な時期に増える傾向がある。一方、戦争などで社会が混乱すると減る。平和な環境だと画一的な生き方に反発したくなるのではないか」と推測する。
◆覚えてもらえる
「今は人手不足だし、名前を理由に採用、不採用を判断することはない」
神奈川県内にある食品メーカーの社長(66)は、社員の採用に名前の奇抜さは無関係であると強調する。しかし、入社式や表彰式など改まった席では、社員のフルネームが読み上げられる場合もある。この社長は「あまりに変わった名前だと、周囲がどう思うか…」と心配そうに話す。
では、キラキラネームの本人は、自分の名前をどのようにとらえているのか。
「すぐに覚えてもらえるし、いい名前と言ってくれる人もいる」と話すのは東京都に住む20代の男性。将来は映像関係の仕事に就きたいと考えているといい、「名前で損をすることはないでしょう」と不安はない様子だった。
引用元:
鯨渡、天使、南十星、天羅… 増え続ける「キラキラネーム」あなたは読めますか? 周囲は困惑気味だが本人は「すぐ覚えてもらえる」(産経新聞)