思春期の子どもの脚の付け根の関節(股関節)に起こる病気の一つに「大腿骨頭(だいたいこっとう)すべり症」があります。太ももの骨の股関節側である大腿骨頭が後下方にずれる(すべる)病気です。

 子どもの大腿骨頭には、骨が成長する部分である「骨端線(こったんせん)」がありますが、成長が盛んな時期には強度が弱く、この部分で骨頭が後方にすべってしまうのです。この病気が起こりやすい好発年齢は男児が10〜15歳、女児が9〜13歳です。性別では男児に多く、体格では肥満児に多いことが知られています。その発生率は好発年齢層で人口10万人あたり0・2〜11人と報告されています。

 原因の一つとして内分泌系(性ホルモン・成長ホルモン)の異常が考えられていますが、明らかな関連は証明されていません。転倒などの軽い外傷や、肥満による体重増加などの力学的要因も関与して発症すると考えられています。

 この病気になった患者の半数は股関節に痛みを感じますが、残りの半数は股関節ではなく、太ももやひざに痛みが出たり、脚を引きずって歩く跛行(はこう)がみられたりするため、早期に診断されないことがあります。

 病気のタイプとしては、転倒などの軽い外傷をきっかけに急激に発症して歩けなくなる「不安定型」と、徐々にすべりが生じて歩くことができる「安定型」の二つがあります。骨頭が後下方にすべるので、股関節の曲がりが悪くなります。診断のための画像検査としてX線、CTなどが行われますが、他の病気と鑑別するためにMRIが行われることもあります。

 診断が確定すれば、基本的には手術治療が必要です。この病気の治療には次のような特徴があります。

 @すべりがひどくなる可能性があるので緊急性を要する。

 Aすべりを完全に戻すことが治療の目的ではない。

 B合併症として、骨頭の血行が悪くなり骨が死んでしまう骨頭壊死(えし)になることがある。

 C小児科で内分泌の病気がないか検査する必要がある。

 手術としては、すべりの度合いが軽度から中程度までであれば、そのままの位置で骨頭を安定させるため金属製のスクリュー(ねじ)で固定します。ただし、重度の場合には、骨を切る「矯正骨切り術」が必要な場合があります。

 すべりの程度が重度の場合、成人してから股関節症の原因となる可能性が高くなります。ですから、早期に発見して、すべりの程度が軽いうちに適切な治療を受けることが大切です。思春期の子どもで股関節や太ももからひざにかけて痛みがあったり、脚を引きずって歩いたりする場合は、この病気の可能性もありますので、整形外科を受診して相談して下さい。


<アピタル:弘前大学企画・骨と関節の病気 予防と治療>


引用元:
思春期の子どもに起こる大腿骨頭すべり症 (朝日新聞)