仕事で多忙な独身のときに凍結保存していた自分の卵子を使って、40代の女性が出産していたことが明らかになった。

 がん患者らが、放射線治療による不妊症のリスクを避けるため、凍結卵子を使って妊娠・出産した例はこれまでにもあった。しかし、「将来に備えて」という理由で凍結した卵子で、健康な女性の出産が分かったのは初めてだ。

 女性の社会進出が進み、晩婚化、晩産化は加速している。いつ、どんな方法での出産を望むかは、本人が決めることではある。

 一方で、凍結卵子による出産は成功率が高くないことや、高齢で妊娠した場合には合併症の危険性が高まるなどの懸念もある。

 卵子の凍結が、出産を望む女性の根本的な解決策になるわけではない。母体へのリスクを社会全体が認識し、仕事との両立などの理由から女性が妊娠出産を先送りしないで済む環境を整えるべきだ。

 大阪市のクリニックによると、女性は2012年から自分の卵子を複数回にわたり凍結した。仕事が忙しく、結婚の予定もなかったが、将来子どもを産むことを希望していたという。結婚後の14年に卵子を解凍して体外受精し、出産した。

 卵子は細胞が傷つきやすく、精子や受精卵と比べて凍結保存が難しかったが、近年の技術の進歩で可能になった。がん治療の影響で卵巣の機能が失われることもあり、難しい治療を乗り越える患者に大きな希望をもたらした。

 「今は無理でも、いつか子どもを持ちたい」と考える女性にとっても、卵子凍結が一つの選択肢であることは確かだろう。

 女性は一般に、30代後半ごろから妊娠、出産率が急速に下がる。「卵子の老化」が大きな原因であることが注目されるようになってきたからだ。

 自治体や企業の中には、住民や社員の卵子凍結を支援する動きもある。

 だが、専門家によると、卵子を採取した年齢によっては妊娠の成功率が低く、年齢とともに子宮など体のほかの機能も衰える。

 このため、日本生殖医学会は、凍結の容認はするものの、「40歳以上での卵子採取と45歳以上の妊娠は推奨しない」という一定の基準を示した。日本産科婦人科学会の専門委員会は「年齢を問わず推奨しない」としている。

 卵子の採取から凍結、保管、体外受精まで含めると、高額な費用がかかる現実もある。

 危険性や費用などを含めた正確な情報を周知し、迷ったときに相談できる仕組みづくりも必要だ。


引用元:
[凍結卵子で出産] 先送りしない環境こそ(南日本新聞社)