世界保健機関(WHO)の諮問委員会が、子宮頸(けい)がんワクチンの安全性に関する声明を出し、日本の政策を名指しで批判した。
接種後の健康被害の報告が相次いだ事態を受け、厚生労働省は2013年6月から接種の「積極的推奨」を停止している。これに対し、WHOの委員会は「安全で有効なワクチンを使わないことは、真の損害を招く」と警告した。
WHOの声明で国がワクチン行政を改める義務はない。安全性を慎重に検討しているのには理由がある。その一方、このがんで多くの命が失われている現実を踏まえれば座視するわけにもいかない。
約338万人がワクチンを接種した。約2600人が健康被害を訴え、うち186人の症状がまだ回復していないことが、昨年9月の追跡調査で分かっている。
接種に対する不安や懸念が消えないのは、健康被害の一部に歩行困難や全身の慢性的痛みなど深刻な症状が含まれるためだ。
厚労省の専門部会は、健康被害は接種時の痛みなどに起因する「心身の反応」という見方をまとめたが、結論には至っていない。国内外の研究者が新たな疾患説などを主張しており、混乱は深まっている印象が拭えない。
WHO委員会の声明には接種の有無にかかわらず、症状の発生にほとんど差がなかったというフランスの調査が紹介されている。
厚労省も今月から全国規模で同じような疫学調査に乗り出した。だが、もし結果がフランスと同じ傾向でも、それだけでは推奨再開のお墨付きを得たことにはならないと国は肝に銘じるべきである。
ワクチンの評価は、感染症予防の有効性と副作用のリスクをはかりに掛けることが原則だ。
接種の後、健康を損なった女性たちがいる事実は動かせない。厚労省は、原因について統一的な見解を示すとともに、接種の「有効性とリスク」を国民に丁寧に説明することが求められる。
このワクチンに対する不安は根強い。安全性に対する十分な理解と合意が推奨再開の前提である。
=2016/01/21付 西日本新聞朝刊=
引用元:
子宮頸がん予防 接種のリスク見極めねば(西日本新聞)