睡眠パターンの変化や睡眠不足がさまざまな健康被害を出していることは、多くの研究で明らかになっているが、ナイトシフトのような、睡眠パターンの崩壊を招く仕事は、乳がんの発症リスクが増す。研究者は、「特に、家族の中に乳がんの病歴をもつ者がいるなら、ナイトシフトはすべきでない」と強調している。

 もちろんそうは言っても、病院や警察、消防など、多くのナイトシフトで働く人たちに支えられている現代。そう簡単に「すべきでない」と言われても困ってしまうだろう。そんな中、最近「正循環シフト」と言って、人の生体リズムに合ったシフトが注目されているようだ。


マウスを使った実験で睡眠不足のがん発生を確認

 アメリカの科学雑誌「Current Biology」に掲載された研究報告では、遺伝子操作(乳がんが発症しやすいようBRCA遺伝子を変異させる)を行ったメスのマウスで就寝を遅らせるグループと、通常の睡眠をとらせるグループに分け、両者の乳がん発生時期を比較した。

 この結果、通常の睡眠グループでは50週で乳がんの発生が認められたが、就寝を遅らせたグループでの発生は8週間早かった。また、その就寝を遅らせた方のグループでは80%以上の高い割合で乳がんが発生したという(※1)。


原因は、性ホルモン濃度が「間違った」時間帯に上昇

 ナイトシフトを続けると、がんリスクがなぜ高くなるのか。そのはっきりとした要因は明らかになっていないが、「エストロゲン」や「テストステロン」などの性ホルモン濃度が適切でない時間帯に上昇することが原因の一つだろうと指摘する研究がある。

 スペインのポンペウ・ファブラ大学研究チームは、さまざまな職種の夜勤労働者75人、昼勤労働者42人(いずれも22〜64歳)から尿サンプルを採取した。彼らの尿から性ホルモン や代謝物の濃度を調べ、そのピーク時を、夜勤労働者グループと昼勤労働者グループで比較した。

 この結果、夜勤労働者グループでは、「エストロゲン」「テストステロン」といったホルモン濃度が、通常では上昇することのない「間違った」時間帯に上昇していることが分かった。

 例えば、昼勤労働者グループではテストステロン値は朝7時〜11時の間にピークを迎えるが、夜勤労働者グループでは午前10〜午後3時にピークが見られたという。

 研究者は、「こうした性ホルモンの作用に混乱をきたしていることが、ホルモンに関連するがん、例えば乳がんや前立腺がんの発生に、何らかの影響を与えているようだ」と推測している(※2)。


アメリカでは 18%近くが不規則なスケジュール勤務

 アメリカ労働統計局の2004年5月調べによると、労働者の80%以上は朝6時〜18時のスケジュールで働いている。しかし、18%近くは夜勤など交替制のイレギュラースケジュール勤務で、さらに細かくみると、夕方のシフト(14時〜深夜)で働く割合は7% 、社員の都合によるイレギュラーシフトが4%、ナイトシフト(21時〜翌朝8時まで)が3%などとなっている。

 ナイトシフト制を採用している職種には、警察関連、消防士、医療従事者(医師、看護師、救急隊員など)、サービス業(バー、レストラン、ホテルなど)、交通・運輸業などがある。ホテル業社員の半数以上は交替制勤務で、交通、倉庫労働者も、30%以上がナイトシフトで勤務している(※3)。
 


日本では「正循環シフト」が注目される

 日本での交替制勤務の実態はなかなかつかめないが、厚生労働省と総務省の調査をもとに、深夜業従事者の割合が推計されている。これによると、1997年の13.3%から、2002年には17.8%、2007年はあまり変わらず17.9%、2012年は21.8%と増加傾向にあるという(※4)。

 病院や製造業などの24時間体制を敷いている職場では、8時間ごとの「3交代勤務」制を採るところが多い。だが、シフトの組み方によっては、深夜勤務のあとに早朝出勤するなど、生活リズムが乱れやすくなる。

 そうしたなか、最近では、「正循環シフト」の採用が増えているそうだ。これは、「人の生体リズムに合ったシフト」であり疲れにくいとされている。例えば、昼勤(朝8時〜16時)が続けば、次は準夜勤(16時〜深夜まで)、その次が深夜勤(深夜〜翌朝8時)といった組み方で、注目されている(※5)。

 病院のような職場では患者の命にかかわるため、経営側は、従事者の心身の健康を損なわない働き方を提供することこそ第一だと考えられる。



引用元:
夜勤による乳がんリスクを防げ! 最近注目の「正循環シフト」とは?(CIRCL)