2014年度の中絶統計が発表になりました。あと僅かで18万件を割るほどに減少していることを知りました。長年、性教育に取り組んできたものですからうれしくて……。(45歳・保健師)

 A 主要因は性行動の停滞では

 厚生労働省が14年度の人工妊娠中絶統計を発表したのが昨年11月5日。予定外の妊娠の防止に人生をかけている僕としては、発表に一喜一憂する瞬間となっています。総件数が18万1905件、前年度比4348件減、20歳未満は1万7854件、同1505件減の数字が目に飛び込んできて出張先の誰もいない部屋で小躍りしていました。

 1955年、今から60年前には117万件の中絶が行われたと報告されていますから、隔世の感があります。中絶は妊娠の結果であり妊娠は性行為の後に起こります。性行動の停滞、言い換えれば性行為に対し消極的であるとか、確実な避妊が行われているかのいずれかに中絶減少の要因があると考えられます。前者の可能性が高いのではないかというのが僕の持論です。

 女性が主体的に取り組める避妊法の代表格といえば低用量経口避妊薬(ピル)や緊急避妊法。わが国の場合、ピルが承認・発売されたのは米国に遅れること40年の99年。避妊できなかった、避妊に失敗した時、72時間以内に対処することで妊娠を84%ほど減少させられる緊急避妊薬が登場したのが11年。これらの近代的避妊法が普及すれば中絶件数が減少するのは当然です。ところが、国連が13年に発表した国際比較データによれば、日本における婚姻・同居関係にある女性でのピルの使用率は1・0%。フランスやオランダは40%以上ですので、わが国のピルの普及率がいかに低いかは一目瞭然です。ちなみに、男性用コンドームについては日本の40・7%に対してフランス7・9%、オランダ9・0%です。日本ではピルが中絶の減少に大きく貢献したとはとても言える状況にありません。

 長年にわたって取り組んできた性教育が中絶を減少させたのではないかとのことですが、一部の地域では起こり得るとしても、日本全体に影響を及ぼしているとは考えられません。出生率の低下、定点報告からみる性感染症罹患(りかん)率の低下、そして中絶の減少を考え合わせると僕には性行動の停滞がこの結果をもたらしているのではないかと考えずにはおれません。

 中絶統計では都道府県データも発表されています。15〜49歳の女子人口1000人に対する中絶実施率は6・9ですが、高いのは鳥取の10・4、熊本10・0、鹿児島9・7、低いのが奈良3・4、埼玉4・3、千葉4・7。20歳未満は6・1で高いのは福岡11・1、熊本8・4、低いのが奈良2・9、山梨3・5でした。(日本家族計画協会クリニック所長、北村邦夫)=次回は27日掲載


引用元:
中絶件数、減少していますね(毎日新聞)