がんの中には、数は少ないが遺伝性のものがある。そうした遺伝性腫瘍の診療に、地域の病院が協力して取り組もうというネットワークが、東海地方や北海道、九州で発足している。どこでどんな検査や手術ができるかといった情報を病院間で共有し、患者に早い段階で病気の説明や治療の選択肢を示すのが目的だ。
▽ブレーキ不十分
遺伝性腫瘍の多くは、細胞のがん化を食い止める「がん抑制遺伝子」の変異で"ブレーキ"の働きが不十分になるのが原因。遺伝性でなくても、がん抑制遺伝子の変異が重なってがんになることは少なくないが、遺伝性の場合、生まれつき遺伝子の一部に変異があり、がんになるリスクが通常より高い。これまでに乳がん、卵巣がん、大腸がんなどで遺伝性のがんが見つかっている。
医師は、発症年齢の若さや、親族にも発症者がいること(家族歴)などを手掛かりに遺伝性の可能性を判断する。気づくのが早いほど、本人や家族に対し遺伝カウンセリングや遺伝子検査、手術など示せる選択肢は広がる。
例えば遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の場合、検査で遺伝子変異が分かれば、計画的な検診でがんの早期発見を目指すことや、発症していない側の乳房の切除や卵巣摘出などの措置も可能になる。米女優アンジェリーナ・ジョリーさんは、全く発症していない段階で両側の乳房と卵巣を切除した。
▽地域全体で
だが、国内では最近まで遺伝性のがんに対する関心は高くなかった。東海地方の複数の病院で相談業務に携わる認定遺伝カウンセラーの大瀬戸久美子さん(30)は「数年前のカルテを見て、最初に家族歴を聞き遺伝の話をしていれば、もっと良い選択肢を示せたのではと思った例は幾つもある」と振り返る。
一方「遺伝性では」と疑われる患者を見つけたとしても、すべての病院でその先の対応ができるわけではない。
東海地方ではそこで、関心を持つ医師やカウンセラーらが中心となり、2013年にネットワークを結成。現在は愛知、三重、岐阜、静岡から約20の医療機関が参加し主にHBOCの治療で連携している。
例えば、ある乳がん患者が、家族歴から遺伝性と疑われた場合、詳しい検査とカウンセリングができるネットワークの病院に紹介する。その後の治療は、さらに別の病院で行うこともある。「地域全体で一つの病院となることを目指している」(大瀬戸さん)という。
ネットワークの代表を務める愛知県がんセンター中央病院 の岩田広治乳腺科部長は「がん全体に占める遺伝性腫瘍の割合はそれほど多くはなく、一つの病院で診断から治療まですべての体制を整えるのは合理的ではない。複数の病院で情報を共有して役割分担するのがいい」と話す。
▽広がる連携
北海道では、札幌医大や北海道がんセンターを中心に昨年から連携を開始。メーリングリストを作り、道内外の約80人の医療者がHBOCの遺伝子検査や手術に対応できる施設の情報を共有する。九州も九州がんセンター(福岡市)を事務局に今年、約30施設がネットワークを発足させた。
遺伝性腫瘍の知識を専門外の医療者に広く伝える取り組みも始まった。7月下旬、大阪市の医学研究所北野病院で開かれたセミナーもその一つ。参加した医師らから「今後必要になる知識だと実感した」との声が聞かれた。主催者の一人だった大瀬戸さんは「遺伝子検査やカウンセリングは特別なものでなく、日常診療に近づいている。知らないでは済まないと危機感を持ってほしい」と話す。
(共同通信 岩村賢人)
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引用元:
遺伝性腫瘍に適切な診療を早期対応へ連携広がる東海、北海道などを(47NEWS)