7月23〜27日に行われたビザなし交流で色丹島を訪れた訪問団に、穴澗(クラボザボツコエ)で新設された病院「南クリール地区色丹分院」が公開された。ロシア政府は総工費15億円を掛け3階建ての病棟を建設。小児科や産婦人科もあり、同島の念願だった出産できる環境を整えた。このほか、新たな診療所や保育所の建設計画もあり、人口を増やすための投資が加速する。一方、根室は来年でお産ができなくなってから10年となる。

 「根室で子供が産めないことは知っています。この病院に来てもいいんですよ」。訪問団が視察した25日、病院のアレクセイ・プロスクーリン院長(35)が冗談交じりに話した。

 病院は昨年12月に完成し、北方四島の中で最も新しい。7月中旬には、ロシア保健相が視察するなど同政府肝いりの施設で、院長は「村の分院としては十分な設備。人口が増えることを見込んでこれだけの施設を造った」と説明した。

 医師8人を含む48人が勤務。1、2階は外来、3階は入院スペースで産婦人科、小児科に加え、内科、外科の25床がある。デジタルレントゲンやマンモグラフィーは最新の機械といい、「クリール(北方領土を含む千島列島)社会経済発展計画」(2007〜15年)に基づき、今後は光ファイバー回線を整備し、インターネットを通じてサハリンなどとカルテや診察画像をやりとりする計画もある。

 色丹島では、新病院が完成するまで十分な医療設備がないため出産できず、妊婦は、サハリンなどに入院する必要があった。色丹島で妊婦として登録する女性は年間最大100人ほどで、病院の新設により母子ともに健康であれば、色丹島で産めるようになる。

 子供の増加は、北海岸の斜古丹(マロクリーリスコエ)の保育所でも顕著だ。保育所では現在、待機児童は93人に上る。待機児童の数は07年には45人だったが、毎年、増え続けているとし、保育所向かいの敷地に新たな学校と保育所を建築中。色丹島民は「来年には完成するのではないか」と言う。

 色丹島の人口は約2500人。発展計画に基づき20年までに、日本政府が人道支援目的で供与した斜古丹の診療所に替わる施設を新築する動きもある。ただ、アゼルバイジャン出身で色丹島に住む女性は将来、故郷に帰る予定と明かす。「島に若い人は多いけど、年を取れば快適な住環境を求めて、本土に戻る人が多い。ここは働く場であり、一生暮らす場所ではない」

 一方の根室は、人口減少が止まらない。病院では分娩(ぶんべん)再開のめどが立たず、産婦人科医が全国的に不足していることに加え、首都圏から離れた根室では医師が赴任したがらないのが実情だ。来年からロシア200カイリ内でのサケ・マス流し網漁が禁止されることを受け、さらに市中経済が衰退する恐れがある。

 7月27日に根室港に下りた訪問団員は「返還のためには、ロシア人に豊かな日本の姿を見せることが大切になる。返還運動を後押しするためにも、もっと国は根室に投資すべきではないか」と指摘した。(


引用元:
出産可能、色丹に新病院 根室は分娩再開見えず(北海道新聞‎)