キャリアと妊活の板挟みになるアラサー女性たち
最近、30歳を少しすぎたくらいの女性から妊娠・出産について悩みを聞くことが増えています。
結婚している人は不妊治療を開始するかどうか(すでに不妊治療を受けたことがある人は、さらにステップアップして体外受精を行うかどうか)、結婚していない人は現在のキャリアをあきらめて婚活・妊活に専念したほうがいいかどうか、真剣に悩む人が増えてきているようです。
彼女たちの悩みの元凶は「卵子年齢」。ここ数年、不妊教育(?)が進み、不妊の最大の原因が卵子の老化であること、30代後半になってから不妊治療を始めても妊娠の確率が著しく低下することが喧伝されるようになってきたからです。
不妊の根本的な原因が卵子年齢のせいかかどうかはさておき、中年期以降の男性と若い女性が結婚して子供が生まれるケースは少なくないけれど、40代女性の出産がそれに比べて圧倒的に少ないのは事実。また、「若いうちに子供を産まずに子供ができなくても自己責任」という社会的プレッシャーがますます強まっていることも事実でしょう。
■不妊治療最前線のアメリカでは、妊活の選択肢の一つに卵子凍結が浮上。
不妊治療では日本より一足先を行くアメリカでは、昨年、フェイスブック社とアップル社が、社員の卵子凍結を補助する福利厚生策を打ち出し、話題になりました。
この記事によると、卵子凍結の費用は決して安くはない(凍結に約1万ドル、その後毎年約500ドル程度)が、優秀な人材の確保が課題のシリコンバレーでは、女性社員にこのようなオプションを提供して働いてもらおうというもの。アップルはこれ以外にも、養子縁組に関わる費用の補助もしているそうです。
また、この記事では、アメリカでは約8割は医学的理由がなく卵子凍結を行い、「子供が欲しくて、焦って気が合わない人と無理に結婚して、後に離婚調停でお金がかかったり、逆に年をとってからいい人が見つかって不妊治療代を払うことを考えたら、今お金を使って健康な卵子を保存する方が、貯金しておくより断然いいわ」というような理由で未婚女性が行うケースも少なくないと伝えています。
■年を取ってから子育てのメリット
かくいう私も今年52歳になりますが、6歳の娘を抱え子育て真っ最中です。
娘を養子に迎えたのは夫も私も46歳のときでしたので、体力的に若干不安もありました。また、女性経営者の先輩たちからは「仕事と両立なんて絶対にムリ」と釘を刺されたりもしました。しかし、実際に子育てを始めてみると、想像していたより全然大変ではなく(娘は非常に活発で同じ年頃の女児に比べてかなり手がかかるほうですが)、むしろこの年齢でよかったと思うことが多々ありました。
以下、私が感じたメリットを書いてみます。
・経済的に余裕がある。
夫はサラリーマンとして、私はサラリーウーマン、自営業、経営者として、留学や転職など若干のブランクはあったものの、20年以上ずっとフルタイムで働き、40代後半でローンを組まずに中古マンションを買うだけの貯蓄ができました。残った貯金で15年の学資保険にも加入しましたので、アメリカやオーストラリアに私費留学したいなど言い出さなければ大学まで教育費は心配ありません。
また、家事代行やベビーシッターなど、必要なときに家事を外注して手伝ってもらうのもそれほど負担になりません。
しかし、もしも30代で住宅ローンを組み、切り詰めた生活をしながら仕事と子育てをしていたら、金銭的、精神的なプレッシャーが非常に大きかったのではないかと思います。
・時間的に余裕がある。
女性に限らず男性も、20代前半から中盤にかけてはとにかく仕事を覚えるのに必死で、20代後半から30代にかけては、それまでに得た知識やスキルを発展させて最前線で仕事に打込める時期だと思います。昨年、「働くママたちによりそうことを」というサイボウズのCMが話題になりましたが、子育てをしながら責任ある仕事を任されて苦悩する30代女性の姿は、私には非常に痛々しく映りました。
しかし、40代を迎え管理職になっていく頃には、働き方も若い頃とは違ってきます。例えば、営業の最前線はほとんどが20代、30代ですので、40歳過ぎのおじさん、おばさんが若い人たちにまじって第一線で営業してもそれほど成果は上がりません。いきおい社内での管理やプランニングの仕事が増えることになり、結果として自分のスケジュールを采配できる時間的余裕も出てくるのです。
私自身の場合はたまたま40代前半で会社が経営危機に陥り、時間的にも精神的にも経済的にもまったく余裕がない状況になってしまいましたが、仕事がある程度安定していれば、40代前半から半ばにかけて出産し、子育てを始めるのには、女性にとっても男性にとっても絶好のタイミングなのではないでしょうか。
・精神的に余裕がある。
40代ともなれば、精神的にかなり成熟してきます。仕事でもプライベートでも、それまでに蓄えた経験がありますので、20代、30代であったらなす術がなくおろおろしてしまったような事柄でも、ある程度余裕をもって対処できるようになります。
勢い、子供に対しても鷹揚になり、「他の子はああなのになぜうちの子だけ?」と懊悩するようなことはほとんどありません。親になる前に私が心配していたのは、「この子さえいなければ・・・」と思う日が来てしまうのではないかということでしたが、実際にはそんなことはなく、「いろいろあるけど、なるようになる」と悩みが湧いてこないのです。
・自分の将来がある程度見えてくる。
多くの人が抱える不安とは、将来に対する不安でしょう。自分や夫の仕事がこれからどうなるのか、住宅ローンや教育費を払っていけるだけの収入があるかどうか、病気になったらどうするか、会社をリストラされたらどうするか・・・。20代、30代では自分たちの将来が見えず、漠然とした不安にさいなまされることが少なくありません。これに子育てが加わると、さらに不安の要素が多くなります。
しかし、40代も半ばともなれば多くの会社の役職定年まであと10年。大きな経済変化さえなければ自分が働く会社がどうなっていくかの見通しもおおかたつきます。自分がどこまで出世するのか、経営者であれば自分が経営をしている間に会社をどこまで成長させるのかも、大枠で見えてきます。その分、不安も減っていくのです。
■卵子凍結という「後からでもできるかもしれない」妊活オプション
三世代同居が普通だった行動経済成長期以前、子育てで大きな役割を担っていたのは同居の祖父母でした。当時の女性たちは家計にとっての貴重な働き手として、子育てに専念する時間的余裕などなかったのです。現在でも北陸など大家族が一般的な地域では、多くの女性が当たり前のようにフルタイムで働き、 祖父母が家事や子育てを積極的にしています。ですから、年を取ってからの子育てが体力的に大変、という前提はあまり意味がないと思います。
もちろん高齢出産は母体に対するリスクも大きく、凍結卵子を使えば必ず妊娠できる保証があるわけではありませんが、卵子凍結で卵子を若い状態のままに保つことにより、染色体異常など多くのリスクを低減できると聞いています。
仕事でも、妊娠でも「今しかできない」という時期があることは間違いありません。
「卵子凍結」という新しいテクノロジーを使い、「今しかできない」を「後でもできるかもしれない」という保険として使うという考え方も、仕事と子育ての両立を考えたときに、一つの重要な選択肢ではないかと思います。
引用元:
卵子凍結という妊活オプションを考える。(BLOGOS)