重い身体障害の小児が自宅で暮らすのを支える小児在宅医療。きめ細かく障害児と家族を支えようと、病院と診療所が協力し、より幅広い人材が関わる仕組み作りが始まっている。名古屋市南区の大同病院と名南診療所がサポートする現場を訪ねた。 (佐橋大)

 同市港区の柄沢穂香(えざわほのか)ちゃん(1つ)は一月に病院から自宅に戻り、両親と祖母、兄(3つ)と一緒に過ごす。生まれつき心臓や肺などが弱く、人工呼吸器をつけている。

 母親の美香さんは「この子のため、病院がいいのか家に戻るのがいいのか夫婦で迷った。でも今は、家に帰ってきて良かった」と話す。兄が、穂香ちゃんの退院をとても喜んでくれ、よくかわいがってくれる。

 「ミルクを吐いた」「呼吸器のアラームが鳴っている」。昼夜分かたず、たんの吸引も必要。当初は体調や栄養の管理など、戸惑いの連続だったが、看護師や医師がしばしば訪問したり、電話で対応したりして一家を支えた。

 名古屋大病院の新生児集中治療室(NICU)で一年ほど過ごした後、小児の訪問診療もする大同病院に転院。約一カ月後、退院。訪問看護は系列の訪問看護ステーションが担い、訪問診療は名南診療所の吉岡モモ医師が担当する。

 大同病院の医師の訪問は、入院患者の治療などで二週に一度が限界。小児科の水野美穂子部長(56)は「非常に重い障害なので、対応が不十分」と考えた。小児在宅医療に関わる人材を増やそうと、昨年二月から二カ月に一回、名古屋市南部などの医療・福祉職員向けに開く勉強会に参加した吉岡医師に協力を求めた。

 名南診療所は、大人の訪問診療が専門。小児科医の吉岡医師も、小児の訪問診療は未経験だった。超重症の子を担当する不安を打ち消してくれたのは、大同病院のきめ細かいバックアップだった。

 最初の一カ月は、看護師がほぼ毎日、吉岡医師も毎週一回は訪問した。スマートフォンなども使い、画像付きの情報をやりとり。皮膚に異常が生じたときには、看護師が写真を撮り、病院の医師も含めて情報共有し、意見が交わされた。呼吸を整える作用のある貼り薬の使い方や、塗り薬の選択などでは、小児在宅医療を経験した大同病院の医師も助言した。薬を届ける薬剤師も含めて、専門職がチームで支える体制は今も続いており、美香さんは「とても助かっています」と、まな娘に毛布を掛けた。

 水野部長は「小児在宅医療は、経験するうちにノウハウが分かってくる。地域の先生に不安があれば、サポートする。多くの子どもが安心して地域で暮らせるよう、病院も役割を担いたい」と話している。

◆地域の重症児増加
 重症心身障害児の医療に詳しい愛知県豊田市の市こども発達センターの三浦清邦センター長に障害児の在宅医療について聞いた。

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 厚生労働省の二〇一三年度調査では、訪問診療や往診を受けながら自宅で暮らす小児は全国で約千二百人と増えている。医療の進歩で助かる命が増えたことなどが要因だ。「障害児も地域で」という意識の変化もある。日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の一一年調査で、在宅医療を担う診療所で「小児受け入れ可能」とする診療所は24%。ここを巻き込めれば小児在宅医療はさらに進む。

 重い障害の子は病状がさまざまで専門性も高い。かかりつけ医が全てを診るのは難しい。ノウハウのある地域病院や障害者専門の医療機関との連携が大事だ。 (談)



引用元:
チームで家族支える 小児在宅医療 (東京新聞)