多いがんからまれながんまで、17種類のがんで広く解析

 がん治療のターゲットとして、最近注目が集まっている仕組み「免疫チェックポイント」。

 今回、同じがんでも、多く見られるものから、まれなものまで、免疫チェックポイントの解析がいっぺんに行われ、その共通点や相違点が明らかとなった。

 今後の治療法の開発に生かされそうだ。

免疫チェックポイント
 米国のカーリス・ライフサイエンス社を中心とした研究グループが、がん領域の国際誌キャンサー・エピデミオロジー・バイオマーカー・アンド・プリベンション誌で2014年12月23日に報告している。

 がん細胞の表面に存在する「PD-L1」は、「免疫チェックポイント」という今注目の仕組みに関係するタンパク質。これは、本来は体を守る免疫の働きを暴走させないための仕組みなのだが、これをがん細胞は逆手に取って利用している。

 がん細胞の「PD-L1」が、攻撃にやってきた免疫細胞の表面にある「PD-1」というタンパク質をつかむと、つかまれた免疫細胞はまひして動けなくなり、攻撃できなくなってしまう。これにより、がんは進行しやすくなる。

 がんの分子標的薬として、PD-1とPD-L1が接触できないように邪魔する薬「免疫チェックポイント阻害薬」が開発されている。既にいくつかの種類のがんで効果が確認されており、実用化に向けて準備が進んでいる。Medエッジでもメラノーマ、肺がん、白血病など、これまで多数紹介してきた。

計437のがんを解析
 今回研究グループは、がんのタイプ別ではなく、がん全体をまとめて眺めた場合にPD-1/PD-L1に関して何か共通点が見出せるかどうかを調べた。

 まず、437の手術で切除したがんの組織を集めた。この中には、最初にできたがんも、転移したがんも両方含まれる。437のうち、380は「細胞腫」に分類されるがんで、乳がん、大腸がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚の神経内分泌がん(メルケル細胞がん)、卵巣がん、肝臓がん、子宮内膜がん、膀胱がん、腎臓がん、そしてどこから転移してきたのか分からないがんと、実にさまざまだ。33は「軟部肉腫」に分類されるがんで、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨外性粘液様軟骨肉腫、子宮肉腫だった。24は皮膚の悪性黒色腫(メラノーマ)だった。

 それぞれのがん細胞にPD-L1が出ているかを調べた。また同時に、それらのがんを攻撃しに集まってきた免疫細胞「腫瘍浸潤リンパ球(TIL)」にPD-1が出ているかも調べた。それらのデータをもとに、関連性を解析した。

がんの種類と突然変異の数に関連
 その結果、PD-1を持つリンパ球ががんに集まっているかどうかは、がんのタイプによって大きく異なると分かった。骨外性粘液様軟骨肉腫では全く集まっていなかった一方で、93%の卵巣がんには集まってきていた。

 また、がん細胞で起きている突然変異の数が多いほど、PD-1を持つリンパ球が集まりやすいとも分かった。

 一方、がん細胞にPD-L1が出ているかどうかも、がんの種類によって大きく異なっていた。メルケル細胞がんには全く出ていなかったのに対し、脂肪肉腫、軟骨肉腫には100%出ていた。

 こちらは、がん細胞で起きている突然変異の数が多いほど、そのがんに出ているPD-L1は少ないという関連性が見られた。

悪性なほど多い
 次に、がんの悪性度とPD-1/PD-L1の関連性について調べた。

 乳がんを見ると、予後が悪いタイプの「トリプルネガティブ乳がん(TNBC)」は、そうでないタイプに比べて、PD-1/PD-L1の両方が顕著に多く出ていた。

 同様に、大腸がんを見ると、悪性度が高いタイプの「高マイクロサテライト不安定性(MSI-H)」では、そうでないタイプに比べて、PD-1/PD-L1の両方が顕著に多く出ていた。

 また、発がんのきっかけが「TP53」という遺伝子の突然変異であった乳がんは、他の遺伝子(OIK3CAなど)の突然変異で発がんした乳がんに比べて、PD-1を持つリンパ球が明らかに多く集まってきていた。

 非小細胞肺がんでは、8人の組織(19%)で、PD-1/PD-L1の両方が顕著に多く出ていた。これを細かく調べたが、PD-1/PD-L1が多く出ていることと、発がんのきっかけとなる遺伝子(EGFR、ALK、ROS1)の突然変異の間には、関連性は見られなかった。

 今回の研究で、かなりの種類の固形がんで免疫チェックポイントタンパク質「PD-1/PD-L1」が出ているパターンが明らかとなった。今回調べたがんの中には、治療法が確立されていない悪性のがんも含まれている。

 さまざまながんで、今後の治療法の開発に生かせることは間違いない。

文献情報
Gatalica Z et al. Programmed cell death 1 (PD-1) and its ligand (PD-L1) in common cancers and their correlation with molecular cancer type. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2014; 23: 2965-70.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25392179





引用元:
がん治療で注目の「免疫チェックポイント」、がん全体での共通点や相違点が明らかに(Medエッジ‎ )