さて、今回は不妊治療施設を受信するタイミングについて考えてみたいと思います。日本では不妊症を「2年間、避妊せずにタイミングをとっても、妊娠しない状態」と定義しています。しかし、WHOや米国では1年間となっています。
どちらが正しいというものでもないのですが、有村治子少子化対策担当相のご要望もあり、現在、日本産科婦人科学会、生殖内分泌委員会、リスクマネージメント小委員会では、この不妊症の定義である2年間という期間に関し検討を始めました。
定義が2年間だとすると、妊娠を意図してタイミングを2年間取っても妊娠しない場合に受診するものだとも考えられます。ただ、タイミングを2年間取ってから、不妊治療施設に受診だと年齢が高まって不妊治療効果も減弱することも考えられ、少子化対策の点からも、もう一度検討することはよいことだと考えます。
タイミングと言っても、第9回のこのコラムでもお話したように、排卵時期と1日ずれるだけで妊娠率は大きく違います。タイミングの時期がうまく取れず、ずれていたら回数を重ねてもなかなか妊娠に至らない場合もあります。
ですので、早めに受診され的確な時期にタイミングが取られているかを確認することが大切であるとも考えています。しかし、受診される方が増えることで、診療する側が一人ひとりに時間を割くことが難しくなることも懸念されます。
そこで、私はどのように考えているのかというと、いつもいうように、出産は20代が医学的に一番安全なので、できればこの時期に産んでほしいと考えています。でも、いろいろな理由で、時期がずれると思います。
そこで、32歳ぐらいまででしたら、1年間、基礎体温や尿の排卵検査薬を用いてタイミングを取り、それで妊娠しない場合は不妊治療施設を受診してください。
33歳から39歳ぐらいの方は6カ月間、上記の方法で、排卵日をなるべく特定したタイミングを取り、妊娠しないときに受診してください。
40歳以上の方については、3カ月のタイミングで妊娠しない場合受診してくださいと説明しています。加齢以外に何も原因がない場合では、年齢が若いほど早期に妊娠し、高齢なほど時間がかかります。
3カ月では妊娠しなくても、もっとタイミングの回数を重ねていれば、自然に妊娠する方も多くいます。でも、40歳以上になるといろいろな疾患を持つ方も増えてくるので、早めの受診をお勧めしています。
まずは基本不妊検査をして、異常が見つからない場合は、もう数回タイミングを取ってもらいます。ですので、どの年齢の方でも受診のタイミングは早くてよいとも考えています。不安を感じたらいつでも受診してください。その時は毎日体温を記載した基礎体温表があると状況がよりよくわかるので、持参していただけると幸いです。

齊藤英和 (さいとう・ひでかず)

1953年、東京都生まれ。専門は生殖医学、不妊治療。日本産婦人科学会・倫理委員会・登録調査小委員会委員長。長年、不妊治療の現場に携わっていく中で、初診される患者の年齢がどんどん上がってくることに危機感を抱き、大学などで加齢による妊娠力の低下や、高齢出産のリスクについての啓発活動を始める。白河桃子さんとの共著で「妊活バイブル」、「『産む』と『働く』の教科書」(いずれも講談社)がある。内閣府の「少子化危機突破タスクフォース第二期」座長(2013−2014)。現在、内閣府「新たな少子化社会対策大綱策定のための検討会」委員。


引用元:
不妊治療施設を受診するタイミング【apital.asahi】