将来の妊娠に備えて、卵巣から採取した卵子を凍結し保存する「卵子凍結」。がんの治療などで機能が失われるのを避ける医学的理由のほか、2013年に健康な未婚女性にも卵子凍結を認めるガイドラインが発表され、女性の間で関心が高まっている。医療法人オーク会(大阪市)は、自院で行った卵子凍結説明会に参加した女性を対象に意識調査を実施し、第59回日本生殖医学会で発表した。


■「加齢によって妊娠率が低下する」ことを約半数が知らない

 悪性リンパ腫(血液のがん)の治療で生殖機能を失う恐れがあった女性が、高校生のときに凍結保存しておいた卵子で出産したというニュースが報じられた。卵子凍結は、がんなどの病気で不妊に悩む女性にとって福音となった。また、日本生殖医学会は2013年に「社会的理由による未受精卵子凍結・保存のガイドライン」を発表しており、健康な未婚女性も、パートナーの不在やキャリア形成といった社会的理由で卵子凍結を選択できる。

■子どもを持たない理由1位は「パートナーの不在」

 医療法人オーク会(大阪市)の船曳美也子医師は、2014年3月〜5月に卵子凍結説明会に来院した女性を対象に匿名でアンケート調査を行った。回答者は29〜49歳の総数65人(アンケート回収率78.4%)、平均年齢36.0歳。うち78.5%は現在、性的パートナーがいるという回答だった。




年齢による妊娠率の低下に対する知識(N=65)

 「説明会開始時までに年齢による妊娠率の低下が生じることは知っていたか?」という質問に対してYES(知っていた)と回答したのは32人(49.2%)、NO(知らなかった)が33人(50.8%)。卵子凍結に興味を持つ女性でさえ、約半数が加齢に伴う妊娠率の低下や卵子の老化に関する知識を知らず、専門家との間で高い認識のギャップが存在することが浮き彫りとなった。


 「なぜ、もっと早く子どもを持とうとしなかったのか?」という質問(複数回答可)に対する回答の1位は「(家族形成のための)パートナーがいなかった」で47人(72%)、2位は「仕事上の理由で」17人(26%)、3位は「心の準備ができていないため」16人(25%)だった。


■いつ産むか、自分自身で計画できるための正しい知識を

 凍結卵子の使い道は「自然妊娠しない場合のバックアップとして」という回答が最も多く、32人(49%)だった。


 社会的理由による卵子凍結については賛否両論があるが、晩婚化に伴う高齢出産や不妊治療は増加しているのが現実だ。「今は現実的でないけれど、将来子どもが欲しくなるかもしれない」という女性にとって注目の技術であることは確かだろう。いずれにしても、正しい知識を知ったうえで、自分自身で決断することが重要だ。


 「女性は生殖の限界年齢が男性とは全く異なります。“もっと早く産んでおけば”と後悔することを避けるためにも、早い時期から出産について考えてほしい。そのためにも公的教育の中で、こうした知識を扱っていく必要があると思います」(船曳医師)


 医療法人オーク会では、凍結卵子による出産率は1個約9%で全部使用しても100%にはならないこと、高齢出産や採卵に伴うリスクもあることなどを説明し、卵子凍結のメリットとリスクを十分に理解したうえでの選択をサポートしているという。


 「さまざまな女性疾患にかかる可能性は誰にでもあり、万が一に備えて自分の卵子を凍結しておく『予防的卵子凍結』という選択肢もあります。技術的解決の選択肢を提示し、子どもの産みどきを自分自身で計画する自立した女性を社会的に支援していくことが重要」と船曳医師は訴えている。



引用元:
加齢による妊娠率の低下、女性の多く「知らない」 (日本経済新聞)