これまでは母子感染対策が中心であった日本でも、B型肝炎ワクチンが全員接種になりそうです。WHOは「全ての新生児は、出生後できるだけ早く、できれば24時間以内に1回目のB型肝炎ワクチンを受けるべき」と勧告しており、多くの国で全員がワクチンの接種対象になっています。
出生後できるだけ早くワクチンを接種する理由は、母子感染を含めた新生児・乳幼児期の感染を減らしたいからです。乳幼児期にB型肝炎ウイルスに感染すると、慢性化しやすいのです。
一方、急性B型肝炎の多くは青年期以降に発生します。赤ちゃんのころに受けたワクチンの効果は、青年期以降も有効なのでしょうか。一般的に、ワクチンでいったんは免疫がついたとしても、時間が経つにつれて段々と効果が薄れていくことが知られています。
B型肝炎ワクチンについては、台湾での研究(Wu TW et al., Chronic hepatitis B infection in adolescents who received primary infantile vaccination., Hepatology. 2013 Jan;57(1):37-45)を参考にすれば、すべての人に効果があるとは言えないものの、それなりに有効であると考えられます。
台湾では1986年から、すべての新生児がB型ワクチンの接種対象となっています。1987年以降に生まれた高校生8733人のB型肝炎ウイルスに対する防御抗体(HBs抗体)を調べたところ、48.3%が十分な量の抗体を持っていました。乳児期にB型ワクチンを接種すれば、だいたい半分ぐらいの人は効果が高校生までは持続します。
さらに、防御抗体の量が不十分だった人のうち、1974人を対象に追加のワクチンを接種したところ、72%に十分な量の抗体がつきました。乳児期の接種だけでも半分は効果は持続し、残りの半分も追加接種をすれば7割は抗体が付きます。合わせると、約85%(50%+50%×0.7)はB型肝炎に対する防御効果が期待できるわけです。
ワクチンの種類や細かい接種方法の違いがありますし、日本と台湾でB型肝炎ワクチンに対する反応に民族差があるかもしれませんので、日本でも全く同じことが言えるとは限りません。ただ、現時点ではもっとも参考になる研究です。劇症肝炎や、劇症までいかなくても入院を要するような急性肝炎、あるいは慢性化して肝硬変や肝がんになる患者さんを85%減らせるとしたら、とても有意義なことだと思います。
さらに、B型肝炎は感染症ですから、集団免疫効果により、85%よりも大きな効果が期待できます。B型肝炎ワクチンで抗体がつかない人も、周囲が免疫を持つことによってB型肝炎に感染する確率が減るのです。従来の母子感染防止では得られない効果です。
引用元:
《185》 乳児期のB型ワクチン接種の効果はどれくらい持続する?(朝日新聞)