もし、あなた、あるいはあなたの家族が妊娠をしていて、お腹の赤ちゃんに何らかの障害があることがわかったら、どうするだろうか?
赤ちゃんが生まれてから、どのように生きて行けるのかを考えるのではないだろうか。教育はどう受けるのか。社会でどう生きていくのか。経済的にはどうなのか。そして、ビジョンが描けず愕然とするのではないだろうか。
日本は、他の先進国に比べて、障害者の社会参加を推進し差別をなくすための法整備が遅れていると言われる。たとえば、学校では障害児が普通に受け入れられ健常児と共に学んでいたり、職場でも障害者が働いているのが当たり前であれば、産まない選択をする人はもっと減るかもしれない。
出生前診断は、生まない選択を助長するものだから反対だという論調もある。しかし、本当は、障害者と健常者が共存する社会でないことが、生まない選択を助長しているのかもしれない。
「胎児診断」で助かる命が増える
「産まない選択については、簡単には結論がでない問題です。たとえば、アメリカでは、『命を奪うことであるからすべきでない』という意見と『女性の権利として認めるべきだ』という2つの意見があります。結論は出ないが、議論はします。日本では、議論そのものをしようとしない傾向があるように思います」(中村院長。以下同)
ちなみに、日本の母体保護法では、分娩が身体的、あるいは経済的理由で母体の健康を害する恐れがある場合などに指定医師の判断の元で人工中絶が認められており、産まない選択が「女性の権利」とは考えられていない。
出生前診断が、結論が簡単にでない問題を含んでいることは、長年、胎児と赤ちゃんを見守り治療してきた中村院長にはよくわかっている。その上で「助かる命が増える。やはりそこが、私の原点です」と、院長は「胎児診断」の意義は小さくないと考える。赤ちゃんの約2%は、各臓器の形態異常などで生まれてくるが、「胎児診断」を行えば、多くは前もって知ることができる。早くわかれば、治療できることも多い。
その院長のひとつの夢は「胎児診断」が普及して、希望する人は誰でも受けられるようになることだ。
「現在は、『胎児診断』について知っている方、また年齢が高い方、不妊治療をされた方などが主に検査を受けておられます。また、近くに診断をできる施設がないことも多く、費用も高い。もっと若い方でも、どこに住んでおられる方でも、経済的に余裕がない方でも、希望される方はだれもが、『胎児診断』を受けられるような体制が整うことが望まれます」
たとえば、イギリスでは、産まない選択についての議論は当然あるものの、妊婦さん全員が診断を受ける制度が整っている。日本で同じような制度を整えるためには、まず検査方法と診断基準の標準化が必要だと、中村院長は考えている。
「現在は、施設によって基準がまちまちです。これでは、同じ検査結果が出ても、場所によって診断が異なってしまうということになりかねません。いろいろご意見もあると思いますが、私はまず世界標準を作って、国ごとにどこまで利用するのかを決めていくというのがよいと考えています」
「早くわかれば、早く治せる」を追求し続ける中村院長の目は、一人でも多くの赤ちゃんを救うために、将来を見据えているのだ。
引用元:
正しい知識を広め、希望者は誰でも「胎児診断」が受けられる社会を(ヘルプレ)